【鎌ケ谷市】粟野地区で江戸時代から300年以上続く5年に1度の庚申塔が今年建立され、開眼供養が行われました。
2025年11月10日粟野地区の八坂神社の庚申塔群に新しい庚申塔が加わり、開眼供養が行われるということで撮影に伺い、お話を聞かせていただきました。ありがとうございます。
300年以上続く庚申塔の建立

粟野八坂神社には、庚申塔(こうしんとう)と呼ばれる石塔の建立が江戸時代から300年以上続いています。この元になっているのは、庚申信仰です。平安時代に中国から入ってきた道教の教えを元に、室町時代頃から武士の間で広まり、江戸時代には庶民の間にも広く信仰されるようになりました。

八坂神社の境内にある鎌ケ谷市指定文化財の粟野庚申講及び粟野庚申塔群の看板にも説明が書かれています。庚申信仰では、体の中にいる「三尸(さんし)の虫」が60日に一度巡ってくる「庚申の日」に人が寝ている間に、天の神様にその人の悪事を伝えに行き、寿命が縮められると考えられていました。寝ている間に体から逃げ出すのなら、告げ口されないようにその日は寝ずに過ごそうと、「庚申講」という集まりを開き、夜通しお酒を飲んだり食事をしたり、暗くなったら寝る普段とは異なる娯楽の一つだったと考えられています。

庚申塔には像が刻まれたもの、文字だけのものがあります。こちらに彫られているのは病気や災いを防ぐとされている青面金剛(しょうめんこんごう)です。庚申信仰の本尊として祀られています。

青面金剛が足で踏みつけているのが、「三尸(さんし)の虫」とされています。苦々しい顔に見えます。こんな虫が体の中にいると思うと、出て行ってくれると清々しそうですね。それでも体から出て天の神様に告げ口をしに行かないように願う姿から、時代は変わっても長寿を願う気持ちの強さは変わらないことが伝わってきます。
見ざる、聞かざる、言わざる

庚申塔の下部には、様々な表情の三猿が描かれています。その人の悪事を見ざる、言わざる、聞かざるの意味で描かれているそうです。

八坂神社の境内ではなく、粟野保育園近くの十字路にも庚申塔があります。こちらの下部にも三猿が刻まれています。今から180年以上前の天保11年(1841年)に建てられているため、遠くから見ると分かりづらいですが、

近くに寄ってみると、両手で耳をおさえる「聞かざる」の姿が刻まれているのが分かりました。見ざる、言わざるについても横向きで目をおさえたりする姿をうっすら確認できます。
開眼供養が執り行われました

今年建立された庚申塔は白い幕で覆われていました。

庚申塔の前には、五穀(ごま、小豆、大豆、麦、米)、塩、御神酒、尾頭付きの鯛、昆布、果物などがお供えされていました。

前日は冷たい雨が降り続く一日でしたが、当日は風もなく陽射しも穏やかな一日となりました。読経やお数珠をジャラジャラッと鳴らしたり、棒で杯を叩くなど様々な仏具を鳴らしての供養が行われました。

錫杖(しゃくじょう)と呼ばれる、金属製の輪がいくつもついた杖のようなものも振るとジャラジャラと音がして、まるで音で三尸(さんし)の虫を追い払っているようですね、と後から伺うと、そういった意味も込められているかと思いますとご住職にも教えていただきました。
刻まれる一つ一つに意味が

歴史を感じる庚申塔の下部に右から「講中」と刻まれています。

庚申塔には「講中」と刻まれています。「講」とは信仰を同じくする集団を指しており、ここではその集団によって建てられたことを示しています。以前は右から読むのが一般的でしたが、現在は左から読むのが一般的なので時代の流れに合わせて記されるようになりました。

塔の上部に刻まれる印は月と太陽を表しています。夜通し行うことで、長生きして幸せに暮らせるように願う気持ちが込められています。
次の建立は5年後の2030年

真新しい庚申塔は、5年前に建立された隣のものと比べると文字の色も御影石の色も鮮やかで、5年の月日の流れが感じられます。

粟野地区では夜通し起きているなどの集まりは催されていませんが、脈々と300年以上にわたって建立が続けられています。文化12年(1815年)以降は5年に1度造塔する信仰が続いており、とても貴重です。全国的には青面金剛が描かれた掛軸を飾って集まりをしたり、一つの庚申塔を大事に守り続けている地区もあるそうです。

すぐ脇を東部アーバンパークラインが通り、前の道路も交通量の多い道路の為、開眼供養の間もずっと車が途切れることはありませんでした。今も昔も交通の要所のこの地域で続く庚申塔の建立。江戸時代の人々は300年以上後の2025年にも建立が続いているとは、思いもよらないかもしれませんが、残していくこと、続けていくことの重みと価値をずらりと並ぶ庚申塔群から感じられる貴重な場所です。
50基近い庚申塔が立ち並ぶ、粟野庚申塔群が見られる粟野八坂神社はこちら↓






